real-time PCRについて
PCRによる定量では、増幅産物がある限度を越えると増加が停止してしまい、鋳型量を反映できなくなるという問題(プラトー効果)がある。この問題点を解決するために様々な方法が考案されており、その一つにreal-time PCRがある。real-time PCRとは、PCRによる遺伝子の増幅の過程を蛍光検知装置によりリアルタイムで追跡し、そのPCR反応曲線をプロファイリングする検出技術である。発光の強度はPCR中に合成されたターゲットDNA量の割合を示す。病気の診断や遺伝子組換え作物の定量分析、一塩基多型のスクリーニングなどに利用されている。real-time PCRは、電気泳動が不要、増幅が指数関数的に起こる領域で産物量を比較できる(より正確に定量できる)、感度が高いなどの利点があり、迅速で定量性に優れた方法である。しかし、機器が効果でランニングコストやメンテナンス費用などがかかるという欠点がある。現在、real-time PCRにはPerkin-Elmer社のTaqManやBioRad社のiCyclerなどのシステムが利用されている。以下に、TaqManプローブを用いた方法を示す。
【TaqManによる検出】
この方法では、目的とする配列を増幅させるためのPCR プライマーと、その内側の配列に相補するTaqManプローブを使用する。TaqManプローブは、5�末端にR:reporter(発光基)、3�末端にQ:quencher(消光基)の2つの蛍光色素を持った20-24塩基のオリゴヌクレオチドプローブで、Rの蛍光色素はQの働きにより発光しないようになっている。PCR反応が進行しTaq ポリメラーゼによってプライマーから伸長反応を続けると、5'→3' エキソヌクレアーゼ活性によりTaqManプローブが分解される。このとき蛍光色素R が強い発光を発し、TaqMan システムではこの蛍光を検出する(図1)。また、PCR 反応においてTaqManプローブの分解が起こらなければ、蛍光は検出されないので、目的遺伝子の有無を測定できることになる。
実際には検量線を作成し、それを元に定量を行う。検量線は、標準となるDNAの量をいくつか変えてTaq Man PCR systemで反応を行い、図2に示すCT値を測定する。DNA量の対数と各濃度で得られたCT値をグラフに表し、検量線とする。その後、サンプルをTaq Man PCR systemで測定し、検量線を用いて定量を行う。
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図1 TaqManの原理
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図2 増幅のプロットのモデル