(6) シロイヌナズナのマクロアレイを用いた、
コケ植物のカルス特異的遺伝子の単離と解析

熊本大学は、コケ植物のカルス化や培養細胞についての長い研究の歴史を持っています。現在熊本大学名誉教授の小野莞爾先生が最初にコケ植物のカルスを作ったのは、40年近く前です。この研究(6)は、その歴史を継いでいます。

アレイテクノロジーは、近年分子生物学の分野において急速に発展してきている技術です。マイクロアレイであればスライドガラス上に、マクロアレイであればナイロン等のメンブレン上に数千から数万の遺伝子に対応したcDNAやDNA断片を貼り付け、それに対するハイブリダイゼーションを行うことで、ゲノムワイドな遺伝子発現解析が可能になります。ただし、この方法は通常既知の塩基配列を元に解析を行うため、塩基配列の決定が進んだモデル生物でほとんどの研究が行われています。
我々は、コケ植物のゼニゴケに注目し、高等植物のモデル植物であるシロイヌナズナのcDNAマクロアレイを用い、ゼニゴケの遺伝子発現解析を試みています。その結果、シロイヌナズナのcDNAマクロアレイに対して、コケ植物のRNAから調整したプローブを使用するヘテロアレイ法を確立し、それを用いてコケ植物のカルス細胞で発現している遺伝子を見出すことができています。現在、これらの遺伝子を解析中です。この方法は系統的に離れたコケ植物にもシロイヌナズナのアレイを応用できることを示したもので、他の生物種にも応用できる可能性があります。

ゼニゴケのRNAを用いたヘテロアレイ解析

図 ゼニゴケのRNAを用いたヘテロアレイ解析の一例

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