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第4回日本RNA学会 (2002年7月、つくば市 つくば国際会議場)
 

mRNA核外輸送における酵母核小体の新たな役割
 
○井手上 賢1、柳田 充弘2、大島 靖美1、谷 時雄3
(1九大院・理・生物科学 2京大院・生命科学 3熊本大・理・生物科学)
 
 遺伝子の転写の場である核と、蛋白質が合成される場である細胞質が核膜により区画化されている真核生物において、mRNAの核から細胞質への輸送は遺伝子発現の必須過程となっている。我々はmRNAの核外輸送機構を解析するため、oligo dT probeを用いたin situ hybridizationにより11株の分裂酵母mRNA核外輸送温度感受性変異株(ptr :poly(A)+ RNA transport)を単離し、それらの原因遺伝子のクローニングと解析を進めてきた。これらptr変異株の中でptr4およびptr11はmRNAが核内に蓄積する表現型に加え、染色体分離の異常のため核が分裂できないまま細胞質分裂を起こすcut (cell untimely torn)と呼ばれる表現型も示す。ptr4およびptr11においてpolyA+RNAを核内に蓄積させる細胞の数はcut表現型を示す細胞のおよそ半数であり、異常な細胞質分裂により生じた二つの娘細胞のうちの片側のみにmRNA核外輸送に異常がみられた。核小体特異的に局在することが知られているフィブリラリン蛋白質の抗体染色を行なったところ、核小体を持たない娘細胞にのみpolyA+RNAが核内に蓄積されるという明確な相関が見られた。この結果は、cut変異に基づく異常な細胞分裂によって核小体の不等分配が起こり、核小体が分配されなかった核でのみmRNAの核外輸送阻害が生じた可能性を示している。一方、分裂酵母温度感受性変異株nuc1はRNA polymerase I large subunitに変異を持つが、制限温度下において核小体の構造変化を起こし、クロマチン領域がリング状になる表現型を示す。in situ hybridizationによる解析の結果、nuc1では核構造の変化に伴いpolyA+RNAが核内に蓄積することが明らかになった。以上の結果は、核小体にリボソームRNAのプロセシングやリボソーム蛋白質の会合といった機能の他に、mRNA核外輸送に関与する機能が存在する可能性を示唆している。