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第4回日本RNA学会 (2002年7月、つくば市 つくば国際会議場)
 

分裂酵母mRNA核外輸送変異ptr8とヒトコケイン症候群の関連
 
○ 水城 史貴1, 並木 健1, 古川 博美1, 大島 靖美1, 谷 時雄2
(1九大院・理・生物科学 2熊本大・理・生物科学)
 
 我々はmRNA核外輸送に関わる因子の同定と解析を目的として、分裂酵母Schizosaccharomyces pombeを用いて制限温度下でmRNA核外輸送が阻害される11種類の温度感受性変異株( ptr1~11:poly A+ RNA transport)を分離し、それらの原因遺伝子の解析を行った。それらのうち、ptr8+遺伝子は転写因子複合体TFIIHの構成因子ヒトXPB/ERCC3と高い相同性を示すタンパク質をコードしていることを昨年度の本大会において報告した。ヒトXPB/ERCC3 は色素性乾皮症の原因遺伝子として知られており、その変異株はUVに対して高感受性である。ptr8-1におけるUV照射に対する感受性を調べたところ、許容温度26。C並びに準許容温度30℃において高い感受性を示し、Ptr8pは分裂酵母におけるヒトXPB/ERCC3の機能的相同 因子であると結論された。
 ptr8-1変異株では制限温度にシフトしても、遺伝子の転写や成熟mRNAへのプロセシング 反応は正常に行われる。しかし、生成された成熟mRNAの核外輸送は制限温度下で迅速に阻 害され、タンパク質合成の急速な低下が観察された。また、Ptr8pのmRNA核外輸送におけ る機能が他の生物においても共通に見られるか調べるために、出芽酵母におけるPtr8p相 同因子の温度感受性変異株ssl2-rttを用いてin situ hybridizationを行った。その結果、 ssl2-rttにおいても制限温度下でmRNA核外輸送阻害が観察され、Ptr8pのmRNA核外輸送に おける機能は生物種間で保存されていると推定された。興味深いことに、ヒトXPB/ERCC3 は色素性乾皮症だけでなく、極度の生育阻害や知能障害を主症状とするコケイン症候群や 硫黄欠乏症毛髪発育異常の原因遺伝子としても知られている。従来、これらの疾患は転写 症候群として知られてきたが、以上の結果は、コケイン症候群を含むいくつかの症候群は mRNA輸送症候群ともいうべき新たな病態カテゴリーに含まれるべき疾患である可能性を示 唆している。