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第24回日本分子生物学会 (2001年12月、横浜市 パシフィコ横浜)
 
遺伝子の転写制御とmRNA核外輸送のクロストーク
 
黄信1、渋谷利治1、水城史貴1、井手上賢1、吉田准一1、大島靖美1、○谷 時雄2 
(1九州大院・理・生物科学、2熊本大・理・生物科学)
 
  遺伝子の保存と転写の場である核と蛋白質への翻訳の場である細胞質が、核膜によって空間的に隔てられている真核細胞に於いては、遺伝子から転写されたmRNAの核から細胞質への輸送は、遺伝子発現における必須過程の一つである。我々はmRNAの核外輸送機構を解明する目的で、分裂酵母のmRNA核外輸送温度感受性変異株10株(ptr1〜ptr10)を分離し、それらの原因遺伝子の解析を行った。その結果、ptr6+遺伝子は基本転写因子複合体TFIIDの構成因子ヒトTAFII55の相同因子を、ptr8+遺伝子は転写因子複合体TFIIHの構成因子ヒトXPB/ERCC3の相同因子をそれぞれコードしていた。ptr6-1では、遺伝子の転写とmRNA核外輸送の双方が制限温度下で阻害された。一方、ptr8-1においては制限温度にシフトするとmRNA核外輸送の迅速な阻害を示すが、遺伝子の定常状態の転写量は正常であった。また、動物細胞核へ蛍光標識したヒトグロビンmRNAを顕微注入し、細胞質への輸送過程を可視化して解析する実験系に於いて、蛋白質への翻訳を阻害しても核外輸送の阻害は起こらないが、アクチノマイシンD等の転写阻害剤で細胞を処理すると、顕微注入したmRNAの核外輸送が阻害されることが示された。興味深いことに、転写阻害剤処理で核外輸送を阻害した場合、輸送されなかった蛍光mRNAの一部は核内においてSC35等のスプライシング因子が含まれるスペックル領域と隣接した領域に蓄積した。これらの結果は、mRNAの核外輸送機構と遺伝子の転写装置との間に密接な機能的関連性が存在する可能性を示唆している。