マリンバイオ研究室
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教授: 滝尾 進
「光合成とアンテナ装置」

 植物は動物のように自由に動くことができないため,動物とは異なるさまざまな能力をもっています。空気中の二酸化炭素を材料に糖を作る「光合成」もそのひとつです。植物は環境中の硫酸塩や硝酸塩を材料に生活に必要なすべての種類のアミノ酸をつくることもできます。光合成反応は,このアミノ酸合成にも使われています。

 光合成反応は葉細胞にある葉緑体で行われます。太陽からの光エネルギーはチラコイド膜表面にあるアンテナ装置により吸収され,反応中心へ運ばれ,光合成明反応に使われます。光を多く吸収するほど光合成は活発になりますが,必要以上に吸収すると余った光エネルギーにより有害な活性酸素が発生してしまいます。このため,植物は光エネルギーを効率よく利用するための様々な仕組みをもっています。

「ノリの色落ち」

 スサビノリは海苔養殖に利用されている海藻(紅藻)の一種です。ノリから色素を抽出すると紅色のフィコエリスリンなどのフィコビリン類や緑色のクロロフィルなどの光合成色素が分離できます。フィコビリン類は光合成アンテナ装置フィコビリソームに含まれています。クロロフィルはアンテナ装置だけでなく光合成の反応中心でも使われています。

 赤潮などによる海水中の栄養塩類の低下や地球温暖化による海水温上昇などの悪環境では,ノリはいわゆる「色落ち」を起こします。このとき,フィコビリン類が減少することは20年前に明らかになっていました。しかし,その分子機構は研究されていませんでした。私達は「ノリの色落ち」を「ノリが悪環境で生き延びるためのストレス応答機構」であると考え,そのしくみを遺伝子のレベルから調べています。