談話会の記録

熊本大学数学談話会

会場:大学院自然科学研究科棟数理演習室301

この談話会は プロジェクトゼミナールと一環しています.

2014年度

日時:平成27年3月11日(水)
時間:午後4時30分〜 5時30分
講演者:Oleg Lisovyy 氏(Universite de Tours)
題目:Painleve VI equation and conformal blocks

アブストラクト: The Riemann-Hilbert correspondence is a map between the
moduli space of flat logarithmic connections on punctured Riemann
surfaces and the moduli space of representations of the corresponding
fundamental groups. We will consider the simplest nontrivial example
of the SL(2)-connection on the 4-punctured Riemann sphere. Monodromy
preserving deformation of such connection is described by the Painleve
VI equation, and the appropriate space of monodromy data consists of
conjugacy classes of triples of SL(2,C)-matrices. Solving Painleve VI
amounts to constructing an explicit inverse of the Riemann-Hilbert
map. I will explain how this problem can be solved using theoretical
physics tools, namely conformal blocks of the Virasoro algebra and
combinatorial formulas for instanton partition functions of
supersymmetric gauge theories.


日時:平成27年1月28日(水)
時間:午後4時30分〜 5時30分
講演者:前野 俊昭 氏 (名城大学工学部)
題目:量子シューベルト・カルキュラスに関する最近の話題

アブストラクト: シューベルト・カルキュラスはシューベルトによる数え上げ幾何学の業績にち なんで名付けられているものであるが,
現代的な言葉では旗多様体(或いは一般に等質空間)上の交叉理論に関する組合せ的 な研究と言うことができる.
これをいわゆる量子コホモロジー環に対して研究するのが量子シューベルト・カル キュラスである.
量子コホモロジー環の理論が開拓されて間もない90年代中頃, D. Petersonにより旗多様体の量子コホモロジー環と
アフィン・グラスマニアンのホ モロジー(ポントリャーギン環)の間の同型が発見された.
この同型は非常に不思議で分かりづらいものだったが,この7,8年でかなり具体的な 事が分かるようになった.
この講演では,旗多様体の量子コホモロジー環とアフィン・グラスマニアンのホモロ ジーのそれぞれの基底を与える
量子シューベルト多項式と k-シューア多項式の紹介を 中心に上述の枠組みを概観したい。


日時:平成26年12月10日(水)
時間:午後4時30分〜 5時30分
講演者:Chuluundorj Bekh-Ochir 氏(National University of Mongolia)
題目:On a conjecture of V.V. Shchigolev

アブストラクト: PDFファイル


日時:平成26年11月19日(水)
時間:午後4時30分〜 5時30分
講演者:北 直泰 氏 (宮崎大学)
題目:エネルギー散逸と光増幅効果を伴う非線形シュレディンガー方程式の 解について

アブストラクト: 非線形シュレディンガー方程式の初期値問題を考え、解の挙動に 関するいくつかの
結果を紹介する。ただし、非線形項の係数は実数ではなく、より一般的な複素数の場 合を取り扱う。
非線型シュレディンガー方程式は光ファイバーを伝わる光の様子を記述しており、非 線形項に含まれる
係数の虚部はその符号に応じて、エネルギー散逸と光増幅効果(EDFA)を表してい る。この講演では、
エネルギー散逸を伴う場合に解の減衰オーダーを決定することと、光増幅効果を伴う 場合に有限時間
爆発する解が存在することを証明する。


日時:平成26年10月29日(水)
時間:午後4時30分〜 5時30分
講演者:久保 英夫 氏 (北海道大学理学研究科)
題目:非線形波動方程式に対する外部問題の解の時間大域挙動

アブストラクト: 対応する初期値問題に関しては、1980年代に開発されたベクトル場の方法により大きく進展したが、
その議論を直接、外部問題に適用することが難しいため、特に空間次元が低い場合に外部問題に対する解析は
なかなか進まなかった。それでも2000 年前後には空間3 次元の問題には手がつくようになってきた。しかしながら、
空間2 次元の場合には、解の時間減衰率が更に弱く、その扱いが困難であった。本講演では、解の時空間における
各点評価を精密化することにより、その困難が克服できたことを中心に、最近の進展についてお話ししたい。


日時:平成26年8月6日(水)
時間:午後4時30分〜 5時30分
講演者:前田 定廣 氏(佐賀大学)
題目:複素双曲型空間内の測地球面の断面曲率

アブストラクト:Among homogeneous real hypersurfaces in a complex
projective space, a homogeneous real hypersurface M is of type (A)
if and only if every sectional curvature is nonnegative at a certain
point x 2 M. However for homogeneous real hypersurfaces in a complex
hyperbolic space this property does not hold. Motivated by this fact,
we classify hypersurfaces of type (A) having nonnegative sectional
curvature in a complex hyperbolic space and give some geometric
characterizations of such real hypersurfaces.


日時:平成26年7月16日(水)
時間:午後4時30分〜 5時30分
講演者:高橋 博樹 氏(慶應義塾大学)
題目:エノン写像におけるスメールの馬蹄の崩壊と、その 後に起こる現象について

アブストラクト:力学系理論における重要な概念のひとつに「構造安定性」 があり、これは
力学系の位相的な構造が外部からの摂動で本質的には変化しないことを意味する。
Smaleは構造安定性を力学系の一様双曲性や推移性で特徴付ける「構造安定性予想」を
提出し、これは90年代にMa\~n\'eや林修平(東大)によって(C1級)位相の下で肯定的に
解決された。

ただ、この解決や関連する研究が明らかにしたことは、力学系の中で「構造不安定」 なもの
が大部分を占める、という事実であった。

一方で、1960年代から70年代には計算機の発展によって応用分野では様々な力学系で
時間発展が非常に複雑になる現象「カオス」が発見された。現在では、カオスは非線型の
力学系に普遍的に現れる現象であることが理解されている。また、カオスが現れる力学系
の多くは構造不安定である。

このような事情から、近年の最も重要な課題は構造安定でない力学系の研究にある。
本講演では、構造安定でない力学系としてエノン写像を取り上げ、その分岐について
講演者が以前に得た結果を述べる。