濱名 裕治

熊本大学大学院自然科学研究科
理学専攻数理科学講座
教授
 
教育研究分野:解析学

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講演会

池田信行先生をお招きして,下記の要領で講演会を開催しました.

  日程:平成22年11月24日(水)〜25日(木)
  題名:数学の骨組みを支える偶然現象
  会場:熊本大学五高記念館

そのときの講演内容をまとめていただきました.連絡いただければ送付いたします.


専門分野:確率論,確率過程論
研究テーマ

(1)ランダムウォークの大域的性質

大学院生のころからずっと,ランダムに不純物を含む物質の中での粒子の運動に ついて興味を持っています.確率論の研究では, 不純物を含まない場合と含む場合では粒子の運動は どのように変わるのか,また変わらないのかを考える ことをテーマとするものがあります.単純なモデルとして 正方格子上を動くランダムウォークが挙げられますが, そこで研究される最も基本的な事柄は,どのような条件が あれば確率1で出発点に戻ることができるかということです. 実はこれはなかなかの難問で,1次元のときは完全に 解決さていますが,多次元の場合は,特殊な状況の下でしか 解決されていません.今後の発展が期待されています.

(2)拡散過程の到達時刻

時間とともにランダムに変化する量に,拡散過程とよばれるものがあり, しばしば,確率微分方程式を用いて記述されます.ブラウン運動は拡散過程の 1つの例となっています.この拡散過程が,与えられた集合に初めて 到達する時刻を考えることは,確率論における重要な研究テーマの一つで, 1次元の場合は,ラプラス変換を求める公式が与えられていますが, 多次元の場合には,よくわかっていません.ブラウン運動は, 到達時刻の分布関数,密度関数,末尾確率の漸近挙動などを求めることが できましたが,それ以外の拡散過程については, ほとんど知られていないのが現状です. 最近になって,ブラウン運動を少しだけ一般化した,定数ドリフトをもつ ブラウン運動について,同様の情報が得られました.多次元拡散過程は, まだまだ発展途上の研究領域です.

論文リスト


メッセージ

中学の理科の時間に「水に浮かべた花粉の不規則な運動を 顕微鏡で観測したのがブラウンという人で,その運動を彼の 名前にちなんでブラウン運動とよんでいる.」と習いました. しかし,その現象を実際に見て確認したわけではありませんので, 理屈は教わりましたが実感はまったくなく, なんとなく不思議に思えました.それでいて未知のものに 触れたことへの感動があったのを記憶しています. 実は,ブラウン運動を「花粉の不規則な運動」と説明するのは 誤りで,「水中で浸透圧により破裂した花粉から流出した微粒子の 不規則な運動」としなければいけません.

大学4年のときに数学での研究対象としてのブラウン運動に出会いました. そのときは,正直なところ,あまりよくわかりませんでしたが, それでいてなんとなく面白いと思ったりもしました. 学部生時代の専攻はエルゴード理論というもので,その中でも 確率論とは縁が薄い分野を勉強していましたので, 講義できいてそれっきりとなっていました.ところが, 大学院に進学したときに専攻を確率論にしましたので, ブラウン運動はかなり身近なものになりました. エルゴード理論から確率論へと専攻を替える ことになった理由は公式なものから裏話的なものまでいくつかありますが, 中学時代の経験が自分の意識しないところで影響したのかも知れません.

確率論はサイコロを振ったり,壺からボールを取り出したりして場合の数を 数えるだけのものではありません.現代数学を支える大きな柱のうちの一つで, 自然現象をその研究対象としています. 今ではずいぶんと研究が進み,数学の他の分野だけでなく,生物学や工学, さらには経済学とも関連する幅の広い学問です.

近頃流行のキーワードとして数理ファイナンスが挙げられますが, 確率解析学の応用例として脚光を浴びています.その創始者である 伊藤清博士(故人)が平成18年に第一回ガウス賞を受賞されました. ガウス賞は顕著な実際的応用をもたらした数学的貢献もしくは 数学の応用研究における画期的な業績を挙げた研究者(個人またはグループ) に贈られる賞で,数学の社会へ与えたインパクトの大きさが選考のポイントと なります.


これまで4年生のセミナーで講読した主な本

これまで大学院生のセミナーで講読した主な本


卒業生の進路