分子性導電体を用いた素子作製の試み

 

 有機化合物・錯体分子を構成成分とする導電性物質、分子性導電体は、わずかな分子修飾により多様な電子状態・電気特性を示します。金属絶縁体転移や巨大磁気抵抗効果、磁場有機超伝導など物理学的にも電子材料としても魅力的な現象が報告されてきました。

 私は、こうした分子性導電体を薄膜化することで新たな現象が見いだせないか、という興味から分子性導電体を基板上に形成する手法の開発を試みてきました。その結果、自作の電気分解セルを用いることで、電極基板上にジシアノ金属フタロシアニン系導電体の微小結晶を成長させることに成功しました。

 その中でもジシアノ金属フタロシアニン系モット絶縁体の“薄膜”をITO透明電極に成長させたものに対し、代表的なn型半導体であるフラーレンC60とAl電極を蒸着することで作製したITO/Pc-Mott:C60/Al素子においては、逆整流効果や、ジシアノ金属フタロシアニンモット絶縁体における光電変換特性を見いだすことに成功しています。ジシアノ金属フタロシアニン系導電体における光キャリア生成や光電変換特性はバルク結晶では見いだされておらず、こうした微小結晶“薄膜”作製は新しいエレクトロニクスへの展開に有用な手法であることを示す同時に、キャリア生成機構や電気特性の起源探求など、物理化学的にも興味深いテーマになると期待して研究を行っています。

 参考文献

[1] M. Matsuda, N. Kinoshita, M. Fujishima, S. Tanaka, H. Tajima, H. Hasegawa, Appl. Phys. Express, 6, 021602 (2013).

Home        Member        Research        Publications