熊本大学大学院理学研究科地学専攻(修士課程)

入試問題(平成 7年 9月)


専門

次の問い[1]〜[8]の中より,任意の四問を解答せよ.また,各問い毎に一枚の解答用紙を使用すること.

[1]
鉱物の安定性と鉱物集合(組合せ)の安定性のちがいを,例をあげて説明せよ.

 

[2]
珪酸塩鉱物の結晶構造について下記の問に答えよ.
1.
珪酸塩鉱物が珪酸の塩(complex )であるとされる基本的理由を説明せよ.
2.
珪酸塩鉱物はそれぞれに複雑な構造を持っているが,それらは珪酸塩の基本構造により7種の型に分けられる.7種の型の名称(和名,英名)と各型の構造上の特徴を説明せよ.
3.
珪酸塩鉱物にみられるイオン置換について知るところを記せ.

 

[3]
放射壊変について下記の問に答えよ.
1.
壊変定数と半減期の各々の定義を記せ.
2.
壊変定数と半減期の関係を表す式を求めよ.
3.
初生同位体比について説明し,その地球科学的意義について述べよ.

  

[4]
今世紀には地球表層部の動きに関するいろいろの地球観があらわれた.そしてプレ−トテクトニクスで代表される新しい地球観に到達した.これまでにどのような地球観の変遷があったか.なるべく時代を追ってそれを概説せよ.ただし,すくなくとも,次の言葉を用いること:地球収縮観,大陸移動説,地球膨張説,海洋底拡大説.

 

[5]
下図は,岩石変形実験によって得られた応力−歪曲線の模式図である.下記の問に答えよ.
1.
図の0からYの近くまでは直線である.この範囲は何と呼ばれるか.
2.
Y点は,何と呼ばれるか.
3.
Yを越えた範囲は何と呼ばれるか
4.
温度を変え,封圧,歪速度を変化させずに変形実験を行うと,図の応力−歪曲線はどのようになるか.
5.
A地域では,ある期間に温度が大きく上昇していったが,応力の大きさなど,他の物理条件は変化しなかった.このような条件下で,この期間にA地域に変形運動が起こりうるだろうか?その可能性の有無を上記の4.と関連させて論ぜよ.

 

[6]
いまここに堆積岩の試料がある.この堆積岩を分類するにあたって,観察すべき項目,また必要であれば分析すべき項目について,各堆積岩の定義を考慮して述べよ.

 

[7]
有孔虫の二形(dimorphism)について,具体的に例をあげて説明せよ.

 

[8]
地球とそこにすむ生物の歴史に関して,多くの情報が得られるようになった.その中でも,地球の初期の歴史については驚くほど知識が豊富になった.そこで,つぎのような年表に整理してみよう.

この年表は,地球の誕生以来を表現してある.Aが誕生時でE(0)が現在である.途中に一部目盛の数値()が付けてあり,B(3.5)が最古の化石生物が発見されたときである.下記の問いに答えなさい.
1.
Aに対しても例にならって数値を与えなさい.
2.
Bで最初に出現した生物はバクテリアあるいはシアノバクテリアであると考えられている.当時の大気組成に関して諸説があって確定しないが,そのどれにも共通している特徴がある.それは何か.
3.
動物が出現したのはC(0.8)あたりとされてる.そしてDの項には多数の動物化石が見つかっている.それらの多くはクラゲ類やゴカイなどの多毛類と考えられている.
a.
Dに関してふさわしい数値を与えなさい.
b.
この動物群を何と呼ぶか.
4.
ところで,クラゲやゴカイは普通は化石として保存されにくい.それはなぜか.(みごとに保存されている実例があることを念頭において説明しなさい.)
5.
BからDまでの間に,地球表層の環境にはどのような変化があったか.説明しなさい.


語学

次の問いI,II,IIIを解答せよ.また,各問い毎に一枚の解答用紙を使用すること.

I.
次の英文を和訳せよ.

The history of our present-day ideas about plate tectonics and sea-floor spreading is similar to the above examples. They clearly had their antecedents in earlier theories of continental drift, mantle convection, and sea-floor renewal. Yet prior to the mid-1960's, research in tectonics could scarcely be regarded as being in a state of scientific health. Experimentation and observation, not having a firm theoretical basis, were poorly focused and lacked specific objectives. With the introduction of the concept of plate tectonics, many new avenues for well-focused theoretical and experimental research suddenly became apparent in many of the subdisciplines of earth science. Many lines of productive research closely related to plate tectonics continue up to the present time.

 

II.
次の英文を和訳せよ.

Sedimentary strata can be related to one another both spatially and in time by the geographical distribution and vertical occurrence of certain key taxa called index fossils or guide fossils. To be useful in identifying and relating strata to one another, two requirements in particular should characterize such fossil species: (1) they must have a wide geographic range, and (2) they must be restricted temporally over a short geologic time pan.
A broad geographic range in both contemporary and fossil species can result only if a form has had an effective means of dispersal. Among sedentary marine benthic invertebrate species, there are two principal ways to disperse both rapidly and widely: (1) passive transport of planktonic larvae in ocean currents, and (2) rafting of adults upon floating objects adrift on the sea surface.
The temporal, or vertical, restriction of species in the fossil record may result in two ways: (1) early extinction, i.e., a speedy termination of a lineage, or (2) rapid evolution leading to morphological transformation (i.e., phyletic change) and subsequent speciation.

 

III.
次の和文を英訳せよ.

結晶は,太古の時代から人類によく知られていた.というのは,我々が現在よく知っているように,山の岩石,海辺の砂など,固体物質の形をしたものは,ほとんど全て結晶質の性質をもっているからである.恐らく,紀元前6千年の昔,シナイ半島の鉱山を管理していたエジプト人は,自然に産する多くの鉱物の美しさと形の幾何学的な完全さに気づいていたに違いない.