談話会の記録

2025年度

日時:2025年12月03日(水)16:30-17:30 場所:自然科学研究科棟3階301数理演習室 講演者:桑原 敏郎氏(筑波大学) 題名:「シンプレクティック特異点解消に付随する頂点代数」 概要:複素平面上の点のヒルベルトスキームは、錐的シンプレクティック解消の基本的な例の一つであり、対称群 $S_N$ の作用による商空間 $\mathbb{C}^{2N}/S_N$ の特異点解消を与える。Kashiwara-Rouquierの結果から、A 型有理 Cherednik 代数と呼ばれる表現論において重要な代数は、ヒルベルトスキーム上の $\mathbb{C}[[h]]$-代数層の大域切断として得られる非可換代数として構成できる。この構成の頂点超代数(vertex superalgebra)への類比を考えることで、ヒルベルトスキーム上に $h$-進頂点超代数の層を構成し、その大域切断として頂点超代数の族を定義する。 Bonetti-Meneghelli-Rastelli は、4次元共形場理論における 4D/2D 双対性の文脈で、複素鏡映群 $G$ に付随する超対称頂点演算子代数 $W_G$ の存在を予想したが、上で構成した頂点超代数は $G=S_N$ の場合に $W_G$ に期待される性質を満たすことがわかり、このような構成は表現論で研究されてきた幾何学的な代数の構成と数理物理の新しい関係の端緒となるものと言える。(Arakawa, Moellerとの共同研究) 本談話会講演では、頂点代数になじみのない参加者の理解に配慮して、1次元の射影空間(リーマン球面)のような簡単な場合を例に単純リー代数に対するBeilinson-Bernstein対応のような古典的な結果を下敷きにして上の構成の概要を解説する。
談話会の後に懇親会を企画しております。
参加ご希望の方は11/24(月)までに川節までご連絡ください。

日時:2025年10月29日(水)16:30-17:30 場所:黒髪南 自然科学研究科棟 3 階 301 数理演習室 (DC 301) 講演者:奥田 隆幸氏(広島大学) 題名:「粗幾何学における符号理論」 概要:符号理論は,もともと情報通信の分野において,誤り訂正や効率的な情報伝達を目的として発展してきた.その後,幾何学的符号理論と呼ばれる枠組みが形成され,距離空間,アソシエーションスキーム,等質空間といった多様な数学的対象の上で展開されてきた.一方,粗幾何学は「遠くから見たときの幾何学」を扱う分野として発展し,空間の大域的構造をとらえるための強力な方法を提供する.
本講演では,この粗幾何学の枠組みを舞台として符号理論を展開する試みを紹介する.さらに,この新たな符号理論の枠組みにおいて,等質空間上の不連続群論で重要な役割を果たしている小林固有性判定定理が説明できることを示す.