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第23回現代化学ゼミナール(Frontier Chemistry Seminar 23)(プロジェクト・ゼミナール)
[日時]  6月13日(金)13時00分より14時20分まで
[場所]  C226講義室
[講師]  山本陽介 先生(広島大学大学院理学研究科 化学専攻教授)
[演題]  :「超原子価5配位および6配位炭素化合物の合成と構造」

SN2反応の遷移状態として知られている形式的に原子価電子を10電子有する超原子価(hypervalent)5配位炭素化合物を安定化して単離することは、典型元素化学の分野における夢の一つであった。 古くから、この種のhypervalent炭素化合物の単離を目指した研究が行われてきたが、我々の近年の研究まで、X線解析により固体状態でhypervalent構造が確定した例はなかった。 我々は、立体的に堅固な骨格である新規アントラセン3座配位子を合成し、その堅固な骨格を利用して5配位超原子価炭素化合物およびホウ素化合物の合成とX線構造解析に成功した。最近、さらにいくつかの新規3座配位子を合成し、炭素およびホウ素化合物の合成と構造解析を行ってきた。 その結果、同じ骨格でも配位原子などの違いによって5配位構造をとる系と4配位構造の系に分かれることがわかってきた。4配位構造と5配位構造の違いをどうとらえるかは非常に本質的であり、配位子系の構築において最も重要な問題であると考えている。現在は、結合形成による安定化と配位子系の骨格がひずむことによる不安定化のバランスで構造が決定されていると考えている。
少し弱い相互作用系ではあるが、ごく最近超原子価6配位炭素化合物の合成と構造解析にも成功したので、それについても述べたい。