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材料の劣化やクラッキングと大きく関わっている物質の熱膨張は、素子の安定性や作動温度領域を決定する物性であり、その熱膨張挙動の理解と制御は重要な課題である。本論文では、[MnN(CN)4] と [Mn(salen)] から組み上がるジグザグ構造有する二次元配位高分子に着目し、二次元シートに配位している溶媒分子種により”膨張”と”収縮”を変換可能であることを報告しました。詳細な解析により、シート内に存在する [Mn(salen)] ユニットの構造歪みが熱応答の起源であり、歪みの方向が熱膨張の方向を支配していることを明らかにしました。更に、その固溶化により単一材料中での膨張と収縮が相補的に働くことによる面内のゼロ膨張率材料の合成に成功しました。


Inorg. Chem., 2017, 56, 6225-6233.

多核構造を有する金属錯体は、その金属イオン間に働く磁気的相互作用から単核金属錯体とは異なる特異的な磁気挙動を発現することが知られています。さらにこのような多核構造と磁気的相互作用との相関に関する詳細な考察は、単分子磁石の開発等の観点から非常に有用であるとされています。我々は、3-メトキシサリチル酸誘導体を配位子として用いることで、強磁性的磁気挙動を示すCubane型四核およびWheel型七核ニッケル(II)錯体を合成することに成功し、その分子構造と磁気的相互作用との詳細な相関関係を明らかにしました。


(a) Cubane型四核および(b) Wheel型七核ニッケル(II)錯体の単結晶構造と強磁性的磁気挙動

Dalton Trans., 2017, 46, 8555-8561.

本研究では、アルキル鎖を付与したターピリジンコバルト錯体とグルタミン酸をベースとした脂質アニオンを複合化することで、アルキル鎖の偶奇に依存した集積構造を示す金属錯体超分子の構築に成功しました。超分子構造は、アルキル鎖の炭素数が15以上の場合のみにおいて観測され、炭素数の偶奇に応じて2種類の超構造体(奇数:ワイヤー, 偶数:ロールシート)を形成することが明らかとなりました。また、全ての化合物でスピンクロスオーバー現象(SCO)が観測され、機能性金属錯体の超構造体の構築に成功しました。


(a) [Co(C15-terpy)2](C12-Glu)2(奇数)および(b) [Co(C16-terpy)2](C12-Glu)2(偶数)のTEM画像

Chem. Commun., 2017, 53, 4685-4687.

固体状態での電気化学特性の制御は分子デバイスに向けて重要な課題ですが、金属錯体の分子構造と酸化還元電位の相関を詳細に明らかにできた例はほとんどありません。本論文では、傘型の構造有する五配位錯体 [MnV(N)(CN)4]2- を用いて4種類の金属錯体脂質を合成し、親水部に位置するMn錯体の構造と固体状態での電気化学特性を調べることで、”傘の角度”が小さくなるにつれて、酸化還元電位が上昇するという相関関係を明らかにしました。得られた相関は、五価六価間の構造相転移のエネルギーの違いを反映していることがDFT 計算から分かりました。


(a)金属錯体脂質の集積構造,および(b)配位角度と酸化還元電位の相関

Dalton Trans., 2017, 46, 3749-3754.

本研究では、核酸塩基が示す分子認識能に着目し、塩基対形成を固体状態における金属錯体分子の集積構造制御の戦略として利用することを目的としています。アデニンおよびチミンを導入したターピリジンコバルト錯体、[Co(A-C6-terpy)2](BF4)2、[Co(T-C6-terpy)2](BF4)2を合成し、塩基の種類により異なる集積構造を示すことを明らかにしました。さらに、それら二種類の結晶をを混合することで、塩基対形成によりリング状の二量体を形成する[Co(A-C6-terpy)1.5(T-C6-terpy)1.5](BF4)2を得ました。この結果は、非対称構造を有するターピリジンコバルト(II)錯体の結晶化に成功した初めての報告です。


(a) [Co(A-C6-terpy)1.5(T-C6-terpy)0.5](BF4)2の単結晶構造、および(b) 塩基対形成を介したリング状二量体

Chem. Eur. J., 2017, 23, 7232-7237.

プロトン伝導体は、燃料電池に欠かせない材料であり、高いプロトン伝導度を示す固体電解質の開発が求められています。我々は以前、酸化グラフェン(GO)が高いプロトン伝導度を示すことを報告しました。(J. Am. Chem. Soc., 2013, 135, 8097-8100)しかし、実際にデバイスに応用するには、そのプロトン伝導性をより向上させる必要があります。我々は、3-ヒドロキシプロパンスルホン酸(HPS)を酸化グラフェンの層間に挿入することによって、室温で約10-1 Scm-1という非常に高いプロトン伝導性を有する酸化グラフェンハイブリッド体の合成に成功しました。このプロトン伝導性の向上は、HPSがGO層間を広げ伝導パスを広げるとともに、HPSによってより多くの水分子を層間に保持することができたためであるということが分かりました。


(a) Single crystal structures and (b) temperature dependence of magnetic susceptibilities.

Chem. Asian J., 2017, 12, 194-197.

キラル化合物である[Fe((R )-L)2(NCS)2] (1)、[Fe((S )-L)2(NCS)2] (2)、およびラセミ体の[Fe((R, S )-L)2(NCS)2] (3)を合成しました (L = α-methyl-N –(2-pyridinylmethylene)-cyclohexanemethanamine)。すべての化合物1-3においてスピンクロスオーバー現象(SCO)が観測されました。 その中で、互いに鏡像異性体である1と2はほぼ同じ挙動であったのに対し、3はこれらよりも急峻なSCOを示すことが分かりました。メスバウアー分光法による詳細な解析の結果、分子のキラリティが減少することで、低スピンの寄与が大きくなっていることが分かりました。


(a) Single crystal structures and (b) temperature dependence of magnetic susceptibilities.

EUR. J. Inorg. Chem., 2017, 1049-1053.

コバルト-鉄プルシアンブルー類縁体は電荷移動誘起スピン転移(CTIST)を示す磁気機能性化合物として報告されています。しかし、水などのゲスト分子が磁気挙動に与える影響については明らかにされていませんでした。我々は、Na0.46Co[Fe(CN)6]0.78(H2O)1.31の単結晶X線構造解析に成功し、欠陥のあるコバルトサイトの配位水の存在を初めて確認しました。また、その磁化率測定から、水分子に依存するCTIST挙動を示すことを明らかにしました。


(a)Na0.46Co[Fe(CN)6]0.78(H2O)1.31の単結晶構造及び (b)水分子の吸脱着による磁気挙動の変化

Dalton Trans., 2016, 45, 16784-16788.



Chem. Asian J. 2016, 11, 2322-2327.    

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